地下生活者が青空に憧れを抱くように、非日常的な陽射しを求めて、私たちは旅を繰り返す。
旅に出ると、「想像のもの」と「現実のもの」が違っているのにすぐに気づくが、それが旅というものだ。「現実のもの」が「想像のもの」と同じであれば、旅は必要ない。
断崖から見下ろせば、海は隔絶した深さを、深山にわけいれば、森は闇のなかから生まれる恐怖を、私たちに思い出させる。「現実のもの」が「想像のもの」を圧倒し、私たちを打ちのめす。
旅のなかでしばしば私たちが感じる、齟齬感あるいは疎外感のようなものは、私たちの精神を日常満たしてる「現実の不在」がその虚構性を剥ぎ取られる、失語症にも似た一瞬の快楽なのかもしれない。
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