ルイス・ボンファの音楽2010/10/02

品揃えの豊富なCDショップや古レコード屋などに行くと、必ずあたってみるミュージシャンというのがある。未見の音盤を見つけると、ほとんどためらいなく買ってしまう数少ないミュージシャンのひとりがルイス・ボンファだ。


◆ ふたつのTV映像

彼の演奏ぶりを見ることができる貴重なTV映像が二つある。両方とも、ちょっと長いのだが、前半は彼のギターテクニックの紹介を兼ねた演奏、後半はルイス・ボンファの名をもっとも高くした名曲「カーニバルの朝」(映画『黒いオルフェ』の挿入曲)をTVホストと競演するという構成だ。ずっと音で聴いていたものを、実際の映像で見られるのはとにかく嬉しい。

彼の演奏スタイルは非常に独特だ。力強いピッキング、高度のハーモニクスを交えての演奏は言うに及ばず、今でいうタッピングのようなこともやるし、叩きつけるようなストローク、サンバのリズムを独特のグリッサンドを交えて、ミュートで刻むパーカッシブな奏法、、あのカーニバルのサンバの楽隊が目に浮かぶような演奏、しかもそれをちゃんとベースを入れながら弾くという離れ業だ。 こんなふうに書くと、アクロバット的なキワモノ演奏家のように聞こえてしまうかもしれないが、しっとりとした音楽として見事に成立しているところが凄い。

まずは流暢に英語を話すボンファが印象的な映像




こちらはペリー・コモがホストを務めているTV番組。




◆ O Morro Nao Tem Vez

ルイス・ボンファの名前をはじめて意識したのは、アントニオ・カルロス・ジョビンのアルバムで『O Morro Nao Tem Vez』という曲(スタン・ゲッツのテナーサックスがフィーチャーされているので名盤で名高い『Getz/Gilberto』などと同時期のものと思われる)を聴いたとき、途中で出てく、ジョアン・ジルベルトとあきらかに違う力強いピッキングのクラシックギターのソロがすばらしくて、ルイス・ボンファという人のソロだろうということで調べてみると、ジャズのスタンダードと化している「カーニバルの朝」の作曲者として有名な人であることがわかり、いろいろと彼のアルバムを聴いているうちにハマってしまった。ジョビンの曲としても、とても好きな曲で、暑い夏の夕暮れなどに聴くと、とてもいい気分になる。




ボンファ名義のアルバムでは、『JAZZ SAMBA ENCORE!』 (1963)に収録されている。

◆ The Gentle Rain

「ジェントルレイン」は「カーニバルの朝」の次によく聞かれるボンファの曲だろう。もともとは同名の映画(日本未公開、youtubeで確認した限りではあまり見たくなる映画ではなさそう)の挿入曲らしいが、曲の方はなぜかいろいろな人がカヴァーしている。トニーベネットのものでは、ボンファ自身が歌伴している。確かにしっとりとしたいい曲だ。




ボンファ自身の演奏は、サウンドトラック盤を別にすれば、アルバム『NON STOP TO BRAZIL』(1989)に収録されているが、味わいはあるものの、いつもの力強さがないのが残念。


◆ アルバムINTROSPECTION (1972)から

ある意味もっとも好きなアルバム。完全なギターソロのみのアルバムで、ある意味コマーシャルな彼の諸アルバムの中にあって、異色なほど妥協のない作品のように思われる。ジャズで言えば、セロニアス・モンクの『himself』のような作品の位置づけで、彼自身のもっとも深い音楽性を語っている。また、同じブラジル出身のエグベルト・ギスモンティの作品のように、アマゾンの大森林を彷彿とさせる奥深い静けさを湛えた演奏だ。




◆ 追記:

ボンファのことを調べるうえで、とてもお世話になったサイトのリンクを感謝しつつはらせていただきます。

Luiz Bonfá Discography (日本語版)

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