夜と祈り2010/03/05



光を失った空は休息の影を地上に下ろし、
高層ビルの赤い灯火が
燠火のように呼吸をはじめる時刻。

別れの挨拶を交し合い、
各々の夜の約束に向かって
人々は歩みを急ぐ。

昼間の物語に
もったいぶった相槌が打たれ、
にぎやかな話声はささやきに変わる。

おお、夜よ
人々に平安と
優しい眠りをあたえたまえ。



出会いはいつもおかしな誤解から生じるが、
結局のところ、私たちは
間違うことのない行為を選択する。

しかし、何が意欲され、
何が実現されたのか、
知ろうとすることにやはり躊躇する。

お互いの変身を笑いあい、
内部にある死を、私たちは
何事もなかったように越えてゆくのだが。

ああ、懐かしい友よ
君に喜びと
さわやかな朝が訪れますように。


興醒めの種明かし、
つまり退屈な認識は
必然性の世界を静かに解説するばかり。

だから、時々思い出すことにしよう、
傷つけられて目覚める自由もあれば、
忘れることによって到達する真理もある、と。

安全装置が少しずつ
解除されてゆく武器みたいに
私はだんだん自由になる。

おお、不動の世界よ
すべてを許す子守歌を奏でながら
夢のなかに沈んでゆく私たちを揺らしたまえ。



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